《MUMEI》

少し肌寒く感じる風を切りながらジョギングしていくと、
見覚えのある背中を見つけた。


「賢ちゃん……。」


俺の呟きが聞こえたようだ。


賢ちゃんは弾かれたように振り向いた。


「……なんや。」


やっぱり……まだ怒ってる。


俺は咄嗟に何か話題がないか考えた。


「用無いんやったら行くぞ。」


「ちょっと待って!」


「……なんや。」


「明日のことなんだけど……。」


「明日?」


「う、うん。

明日颯ちゃんの試合があるんだ。」


「へぇー……。

で?」


「で?……て、前賢ちゃん言ってたじゃないか。」


「何て?」


「颯ちゃんの試合行くって……。」


「前の話やん。」


「行かないの?」


「ああ。」


「……どうしても?」


すると突然賢ちゃんは走るのを止めて、
俺の胸ぐらを掴んだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫