《MUMEI》
真実を教えて【1】
 男子達に連れて行か
れた飛夏羽は、公園に
居た。

「…榊君達…なの?」

 飛夏羽は恐る恐る顔
を上げて男子達を見
た。

「うん、そうだよ。飛
夏羽ちゃん…今暇だ
ろ?遊ぼうぜ。」
「暇なんかじゃない。
帰りたいの。」

 翔太の問いに対し
て、飛夏羽は目を逸ら
して反抗した。

「あれ?帰る場所なん
て無いんじゃない
の?」
「…え?」

 飛夏羽は目を見開い
て翔太を見た。

「帰っても誰も居ない
んだろ?そんなとこ
ろ、帰っても仕方無い
だろ。あ、それとも千
葉の所にでも行く
気?」
「何で優都が関係する
の?それに、何で榊君
達は優都を苛める
の?」

 飛夏羽の言葉を聞い
て、全員が大声で笑い
出した。

「それはね、君が千葉
に近づいているからだ
よ。」
「…私が?」

 飛夏羽は頭の中が
真っ白になった。

 自分のせいで、大切
な幼馴染が苛められて
いたのだ。

 サブリーダーの橋口
竜牙はバケツに水を汲
み、それを飛夏羽の頭
から被せた。

「…うっ…」
「本当に最高だよ…飛
夏羽ちゃんって。や
れ、お前等。」

 翔太の命令で、全員
が飛夏羽を遊び始め
た。
ただ飛夏羽は我慢し続
けていた。

 優都の事を思い、胸
が張り裂けそうにまで
なったのだ。

 それから約30分
経った。

 全員息を切らしなが
ら飛夏羽を見ていた。

 飛夏羽の制服はボロ
ボロになり、体中は水
で濡れ切っていた。
何があったか思い出せ
ないほどの恐怖。

 だが、それよりも飛
夏羽の頭の中は優都の
事だけでいっぱいだっ
た。

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