《MUMEI》
真実を教えて【2】
「…私が優都に近づか
なければ…優都が苛め
られる事は無いんだよ
ね?」
「飛夏羽ちゃんに免じ
て…良いんじゃな
い?」
今話していたのは魔
口 新だった。
「…ありがとう。」
「どういたしまし
て。」
飛夏羽の手を取り、
立ち上がらせたのは上
田 和久だ。
「俺、遣る事ないじゃ
ん。」
「俺も〜。」
最後に話したこの二
人は、中山 涼と田中
克哉だ。
この6人が、何時も
優都を苛めているメン
バーだった。
「あ〜楽しかった。
じゃあまた明日学校
で。」
翔太は伸びをして立
ち上がり、歩いて行っ
た。
「また遊ばせてね。」
「楽しかったよ〜。」
メンバーが口々に言
う中、竜牙だけは何も
言わずに飛夏羽を見つ
めていた。
飛夏羽は竜牙から目
を逸らした。
竜牙も飛夏羽から目
を逸らし、走って行っ
た。
全員が居なくなった
後、飛夏羽の目から
は、急に涙が溢れ出し
た。
拭っても拭っても涙は
止まらず、溢れ続け
た。
「…私のせいだったん
だね…優都の…苛めら
れた理由…」
「飛夏羽!?」
飛夏羽は名前を呼ば
れ、驚いて顔を上げ
た。
「…優都?」
優都は息をきらしな
がら飛夏羽の前に急い
でしゃがんだ。
「如何したんだ
よ!?」
「な、何でも無い
よ…」
飛夏羽は咄嗟に優都
から目を逸らした。
逸らした瞬間、飛夏羽
の目から大粒の涙が零
れ落ちた。
「何でも無い訳ないだ
ろ!?」
「本当に何でも無いん
だってば!…ごめ
ん!」
飛夏羽はその場から
逃げ去った。
優都は拳を強く握り
締めて、目だけで飛夏
羽を追っていた。
きっと飛夏羽の事を守
れなくて、悔やんでい
たのだろう。
優都は飛夏羽の鞄を
持ち、自分の家へと
帰って行った。
飛夏羽は自分の部屋
に入ると、そのまま
ベッドに倒れ込んだ。
「…私の…馬鹿…優
都…ごめんね…ごめん
ね…」
飛夏羽の頬に涙が伝
い、後からベッドに染
み込んで行った。
飛夏羽の涙は止まる事
が無く、しばらく流れ
続けた。
丸で、街に降る雨の
様だった。
誰かの目から涙が零
れ落ちるとき、他の誰
かの目にも涙が零れ落
ちる。
だからこの街には、何
時も雨が降っているの
だろう。
飛夏羽は泣き疲れ、
そのまま眠りについて
しまった。
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