《MUMEI》 憧れ「なぁ!! 見てよ蓮翔ちゃん!!」 確か小学生中学年頃。 颯ちゃんが朝から新聞紙片手に、 満面の笑みを浮かべて言い寄って来た。 そして俺の机の上で新聞紙を広げると、 どでかい一面を指差した。 「見ろよ!! やっぱさすがだよな!!」 そこには、 “またも天才少年、快進撃!!” と言う見出しとともに、 負けん気強そうな少年のサッカーをしている姿が載っていた。 「凪谷賢史!! これで何本ハットトリック決めたっけ?!」 賢ちゃん。 そう、この人はあの時の俺達、 いや賢ちゃんを知る子供達誰もが憧れる存在だった。 同い年ながら驚く程の判断力をもち、 ずば抜けたキック力、 俊敏さはまさに天才と呼ぶに相応しかった。 そんな賢ちゃんが活躍する度に、 教室はいつも賑わっていた。 「なあ、試合見に行きたいよな!!」 「うん。 でも父さん達、良いって言うかな?」 「大丈夫大丈夫っ 俺に任せとけって!!」 この日俺達は、 密かに凪谷賢史に会いに行く計画を練った。 前へ |次へ |
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