《MUMEI》

授業終了のチャイム。

それが鳴り終わるより先に

アタシは席を立った。

「何処へ行く」

「何でオマエに言わなきゃなんねーんだ」

「また連れ戻しに行くのに、場所が分らないと何かと不便だからね」

「ふん、来てもらわなくたって戻って来るよ」

「またあの──」

「だから関係ねーだろ、オマエには」

「そうだけどね」

メガネは不機嫌そうに言って

本を開いた。

アタシはその横顔を見つめて‥

何だか複雑な気分になった。

その気分を引き摺ったまま‥

アタシは屋上に向かった。

‥重い足取りで。

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