《MUMEI》

「………。」


物凄い威圧感に、


声が出なかった。


アレだ。


簡単に言えば、


金融会社が雇っている、


脅し用の役の人。


いや、


悪徳商法をしているボスと言ったとこか?


どちらにせよ、


怖かった。


「君、家出して来たの?」


僕の大きなバックを軽々と片手で持っている。


なんだ。


このオジサンが持っていてくれたんだ。


良かった……。


「いえ、


下宿先が中々見つからなくて……。」


「困っているのか。」


「はい。」


「住所も分からないのかい?」


「いえ、分かります。」

僕はそう言って、


小さな紙切れを取り出すと、


オジサンに広げて見せた。


「……何処だか分かりますか?」


しばしの沈黙のあと、


「あー!」


オジサンが叫んだ。

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