《MUMEI》

「‥何だぁ? アイツ‥」

「ありゃホンマにご機嫌ナナメみたいやなぁ‥」

「──────‥」

「ほら、行ったり」

「ぇ?」

「綾瀬んとこ戻ったりや。な?」

「何でだよ」

「まぁ行ってみ」

「‥‥‥‥‥‥‥」

仕方ねーな‥。

「はぁ‥」

溜め息をつきながら

階段を下る。

戻りたくねぇ‥。

アイツの隣りが嫌な訳じゃない。

アイツが鬱陶しい訳じゃない。

ただ‥

アイツの隣りで素直になれない自分が嫌なんだ。

「‥‥‥‥‥‥‥」

逃げたい気持ちを押し殺して‥

戸を開けて教室に入る。

アタシが席に座る瞬間──

「遅かったね」

メガネはそう言って笑った。

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