貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
速水麗那 7
 そんな悪魔の如き囁きを聞くや否や、『ぐさっ』と重く冷たい音がした感覚。
 私の胸に何か刺さったような。痛みよりも苦しみの方を強く感じた。
 血が滴り落ちるのが腕や足の感覚で解る。きっと、真紅で黒い血。
 そして、身体の出血を抑える栓が抜かれた。『ブシャー』と映画とかで観る、悪魔が人を喰う時の様な下品で穢れた音。赫。噴き出し。身体が冷えて逝く。
 何も見えない。何も聴こえない。何も感じない。何も、何も…。
 私は…死んだ。
 今宵、担任の教師に「騒がしいからその罰」と言われ、殺された。死に方も選べず、死んだ。殺された。
 下品な音を立て、穢れた紅の血を曝し、奴の微笑の中で溺れ死ぬ。
 無残に、無念に、無力に。儚く、弱く、脆く。
 命は途絶え、御霊は闇を彷徨い。
 彼に逢い、告げた。私にも…。

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