《MUMEI》
真実を教えて【8】
「…じゅ…ん…」
「優都君!?」
純は優都の傷をハン
カチで押さえながら優
都の顔を見た。
「大丈夫?」
「…飛夏羽は?」
「え?」
優都の思わぬ問い
に、純は黙り込んでし
まった。
何も言わない純を見
て、優都は初めて涙を
流した。
「何で飛夏羽居ない
の?」
優都の涙を見て、純
はうろたえながらも話
した。
「ごめん…それより、
誰が?」
「榊君たちが…」
「やっぱり…」
暫くしてから救急車
の音が聞こえてきた。
救急隊員が担架を
持ってきて優都を乗
せ、そのまま近くの病
院に搬送した。
飛夏羽は教室の自分
の机で顔を伏せ、静か
に泣いていた。
「…優都…ごめん…」
飛夏羽の頭の中に、
優都の笑っている顔が
浮かんできた。
その笑顔がもう見れな
くなると思うと、飛夏
羽は余計に辛くなり、
また、涙が溢れ出し
た。
優都は病院で治療を
受けていた。
幸い命に別状は無く、
純の応急処置が合った
為、大事には到らな
かったという。
「…大丈夫?」
純はゆっくりと頷い
た。
全員、頭を抱えなが
ら黙り込んでいた。
しばらくしてから、
零が口を開いた。
「何であんな酷い事す
るんだろうな…あいつ
等。誰が一緒に居たっ
て勝手なのにさ…」
純も頷いて納得して
いた。
「いい加減、先生に相
談してみたら?」
「そんな事出来ない
よ…」
「あぁもう!そんなん
だから駄目なんだよ!
それじゃあ飛夏羽も守
れないでしょ!?」
李麻が怒り出したの
を見て慌てて純と零が
李麻の腕をつかみ、李
麻を抑えた。
「…そうだよね…強く
ならなきゃ…飛夏羽の
事も守れない…」
「飛夏羽の事、好きな
んでしょ?」
「好きなんだよ
なぁ?」
「好きなんだよ
ねぇ。」
「………」
李麻、零、純の順番
に口を揃えて言った。
この三人に悪気は全く
無かったのだが、優都
は黙り込んでしまっ
た。
「ま、ボス。頑張って
くれよ。」
「ぼっ、ボス?俺
が?」
零の言葉に、優都は
裏返った声で返してし
まった。
そんな優都を見て、全
員が爆笑した。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫