《MUMEI》

「無理だよ〜。

颯ちゃん……。」


「何弱気になってんだよ!

ほら、行くぞ。」


その日の夜。


お互いの練習を終えた俺達は、
全国でも有名な、
大きなスタジアムに来ていた。


何しろ颯ちゃんはやると言ったら即行動へ移す派。


戸惑う俺をよそに、
堂々と入口に向かって行った。


「おぉ!

警備員いないぞ!!」


興奮気味の颯ちゃんに、
俺は素直に喜べなかった。


だってこんなことが父さんに見つかったらと思うと………。


恐ろしくて、
想像するだけで背筋が凍る。


「そんなにビクビクすんなよ。」


「だって……。」


「大丈夫だって言っただろ?」


「うん。

でも……。」


「ちょっとは俺のこと信じてくれよな!」


「う、うん。」


俺はようやく腹をくくって頷いた。


颯ちゃんはそれを見届けると、


「っしゃ!

行くぜ!!」


入口へと入って行った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫