《MUMEI》

入口へ入ってしばらく薄暗い通路を彷徨(サマヨ)っていると、
何やらヒソヒソ話が聞こえて来た。


声のする方へ辿って行くと、
突き当たりの、
“男子更衣室”という部屋から漏れていると分かった。


さっそく颯ちゃんは興味深々でドア越しに耳を当て、
何を話しているのか聞こうとしている。


「だ、ダメだよ。

颯ちゃん。」


小声でそう注意したのだが、
全く効き目はなかったようだ。


「お前も来い。」


そう言って、
無理矢理俺の耳をドアに当てさした。


すると、
とんでもない会話が聞こえた。


「今日のニュースみたか?」


「ああ、見た見た。

凪谷だろ?」


「ああ、何調子こいてんのかね〜。」


「新聞にも載ってたぜ。

アイツのせいで、
俺のゴールが台無しだぜ。」


「いっぺん絞めとく必要あんじゃねぇか?

これ以上生きがん無いためによお。」


「賛成!

まだ凪谷グランドにいんだろ?」


「ああ、ここに戻って来てからにしようぜ。」


凪谷賢史の悪口?


俺達はビックリして顔を見合わせた。

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