《MUMEI》
俺が全部受け止めてやるから【1】
 優都は翔太に引き摺
られ、飛夏羽と同じ体
育館倉庫へと放り込ま
れた。

「じゃあな、千葉。」

 翔太は鍵を閉めて出
て行った。

「…いててて…ん?飛
夏羽?」

 優都が顔を上げたそ
の先には、寝息をたて
て静かに眠る飛夏羽の
姿があった。
優都は無我夢中で飛夏
羽に駆け寄り、飛夏羽
の肩を揺すった。

「お、おい!飛夏羽!
しっかりしろよ!お
い!」
「…う…ん…」

 飛夏羽は優都に揺す
られて、ようやく目を
覚ました。
優都を見ると顔を赤ら
めて優都を見つめ返し
た。

「優都…何でここに?
私は…榊君たちに…」
「俺も…」
「そうだったんだね…
頭…大丈夫だった?痛
くない?」

 飛夏羽は心配そうに
優都の目を見つめた。

「俺は大丈夫だよ。」
「良かった…ごめん
ね…私…」

 優都は首を振って飛
夏羽の口を塞いだ。

「それ以上何も言わな
くて良いから。とりあ
えずここから出る事を
考えよう。」

 飛夏羽は頷いた。

「…でもさ…」

 飛夏羽の涙声を聞い
て優都は急いで振り向
いた。

「…如何したの?」
「私のせいでこんなに
人が不幸になってるの
に…私…生きてても仕
方ないんじゃないか
な…」

 飛夏羽は自分の存在
理由を悔やみ、怒りと
悲しみを織り交ぜなが
ら泣き始めた。

「そんな事無いよ!そ
んな事…絶対無いか
ら!飛夏羽が死んで悲
しむ人はいっぱいいる
んだよ?」
「優都…」
「飛夏羽…泣くなよ。
後で今までの分全部…
俺が受け止めてやるか
らさ。」
「…本当?」

 飛夏羽は泣きじゃく
りながら優都を見つめ
た。

 優都は頷いて飛夏羽
を立ち上がらせた。

「…出よう。」
「…うん。」

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