《MUMEI》 シャワーピッキングでドアを開けた。 愛梨の部屋に入った。バスルームからシャワーの音が聞こえる。 キュートな愛梨が今、一糸纏わぬ姿でいる。 考えただけでエキサイトしてしまう。 忍び足でゆっくりバスルームに近づく。 シャワーを浴びている最中に見知らぬ男が現れたら、さぞかし驚くことだろう。 あのときは黒覆面をかぶっていたから顔は見られていない。 シャワーの音はやまない。頭から全身に浴びている様子が手に取るようだ。 バスルームのドアノブに手をかける。静かに開ける。赤面しながら驚く愛梨の魅力的な表情が頭に浮かぶ。 「!」 いない。だれもいない。シャワーのお湯は出しっ放しで愛梨はいない? 「何してんだ覗き魔」 宏はびっくりして玄関を見た。見知らぬ美少女が腕組みしている。 「愛梨をさらいに来たのか?」 宏はあきらを突き飛ばして逃げようとした。 右ストレート! 「あああ!」 宏はいきなり顔面を殴られ、部屋の奥に逃げた。 あきらが追う。 ボディに左アッパー。右ローキック。バランスを崩した宏の肩を横から両手で押す。ベッドに倒れかけた宏のボディにサイドキック! ベッドの上まで吹っ飛んだ。さらに後頭部にハイキック! 「あっ…」 宏は気を失った。あきらは、演技ではないかどうかを確かめると、愛梨に言った。 「愛梨、もう出てきていいよ」 隠れていた愛梨は開口一番。 「あきらチャン友達少ないでしょ?」 「うるさい。こいつの手足を縛るぞ」 「趣味?」 「おまえも縛ってやろうか?」 「NONONO!」 宏の手足をベッドに縛りつけると、あきらは顔をはたいて無理やり起こした。 「あっ…」 目を覚ます。自分の状況を悟ると、宏はふてくされた顔で横を向いた。 「おい覗き魔?」 宏はムッとしてあきらを睨んだ。 「漫画家に頼まれたか?」 一瞬目を見開いたが、すぐに無言のまま横を向いた。 愛梨は心配そうな表情で見ている。 あきらが迫った。 「だんまりか。男を拷問するのは簡単なんだぞ」 拷問と聞いて宏は焦った。 「痛い目見たいのか。おまえマゾかよ?」 宏は怖い顔であきらを睨む。 「何だよその目は?」 目を指で弾く。 「痛い!」 まだ若い。20代だ。あきらはまた迫った。 「漫画家に頼まれたのか?」 無言のまま横を向く。あきらは拳をつくると、宏の股関めがけてパンチ。 「うっ…」 またパンチ。 「くっ…」 あきらはそのままパンチを連打。宏は蒼白になり、慌てふためいた。 「やめて!」 愛梨があきらの手を掴んだ。 「何やってんだバカ!」 「見てらんない!」 「じゃあ見てんな!」 愛梨は、あきらの手首を掴む。 「ちょっと来て」 玄関まで引っ張ると、愛梨は言った。 「暴力はやだ」 「アホか?」 「アホとは何よ。見たところ悪そうじゃないし、まだ若そうだし」 「イケメンだしか?」 あきらに図星を言われて、愛梨はムッとした。 「そんなんじゃない。とにかく、帰しましょ」 「何?」あきらは驚いた。 「ここで帰せば、恩を感じてくれるわ」 「バカか?」 「バカでもいいよ。あきらチャンみたいな乱暴なやり方は良くないよ」 あきらは怯んだ。 「天然かよ」 「何か言った?」 あきらは呆れ顔でベッドに戻ると、宏に告げた。 「本来なら拷問して吐かして警察に突き出すところだけど、この人が許してあげて解放すると言っている」 宏は目を丸くして愛梨を見た。 「だからおまえも彼女に変なことするのはやめろ」 宏はあきらを睨んだ。 「何か文句あるか?」 宏は慌てて目をそらすと、今度は愛梨を見つめた。 「足洗って」 宏は下を向いた。 あきらは警戒しながら手足をほどいた。 宏はベッドから急いで下りると、玄関で愛梨を見つめた。さらにあきらを睨みつけ、部屋を出た。 「せっかく釣った魚を、もったいない」 しかし愛梨は笑顔だ。 「思いは通じたと思う」 「甘い」 前へ |次へ |
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