《MUMEI》 「落ち着いた‥?」 「ぁぁ‥、何とか‥」 涙で びしょ濡れになったハンカチ‥。 「後で‥洗って返すな」 「ううん、あげるよ」 「ぇ‥」 思わず顔を上げたら 千代がニッコリ笑って 「珠季──水玉好きでしょ」 そう言った。 「だから、あげる」 「──あんがとな」 ハンカチを丸めて ポケットにねじ込む。 それから やっと立ち上がって── アタシは空を見上げた。 まだ涙のせいで滲んで見えるけど‥ 綺麗な空だなって思った。 アタシの心も‥ 早くこんな風に晴れてくれたらいいのに。 どうしたら この雨は止むんだろう‥。 前へ |次へ |
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