《MUMEI》 「そうやけど?」 凪谷賢史は、 面倒臭そうにそう言った。 アレ? 颯ちゃんも俺も思った。 凪谷賢史って、 こんな人だったっけ? テレビや新聞で見る彼の姿は、 とても楽しそうでキラキラと輝いているのに。 何故か目の前にいる凪谷賢史は、 どう見てもそう思えなかった。 「何しに来たんや?」 その言葉で俺達は我に帰った。 「凪谷賢史に会いに来たんだ。」 「……俺に?」 嬉しそうに言う颯ちゃんに、 凪谷賢史は迷惑そうに答えた。 「ご苦労さんなこった。」 そう言って、 俺達の方へ向かって来た。 そして、 「邪魔。」 俺と颯ちゃんを押し退けて、 扉を開こうと手を掛けた。 「ダメだ!」 咄嗟に颯ちゃんと俺は、 彼の腕を掴んでいた。 前へ |次へ |
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