《MUMEI》

樹は公園で見慣れた姿を見つけた。
「静流……どうした、まだ昼じゃないか。」
樹は弟に歩み寄る、隣のブランコに腰掛けた。明らかにサイズが小さい。

「……」

「まあ、あれだな。言いたくない事の一つや二つあるもんだ」
樹はポケットから煙草を出した。静流にも一本渡す。「母さんには内緒ね?」
悪戯っぽく口元が上がる。

「……要らない」
静流は素早く立ち上がる。交差点へ走り去っていく。
樹はまだ新しい煙草を踏み付け、追いかけた。




「静流!」
樹は静流の腕を引き寄せた。


車のクラクションで酷く耳鳴りを起こした。
目まぐるしく車が流れる。巻き込まれたら、と考えるとぞっとする。

静流が樹の胸に鼻を擦り付けている。
湿っていた。

身体は既に樹に預けられていて、樹の腕は自然と力が篭った。

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