《MUMEI》

「悪かったな、アタシで」

「別に悪いとは一言も言って無いだろう」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「随分とやつれたな」

「うるせーよっ。行こーぜ、千代」

「ぁ、珠季‥っ」

アタシの後を

千代が小走りで追いかけてくる。

その後ろを

メガネが鬱陶しそうにしながら歩いて来る。

今だけは

アタシはアイツの前にいる。


ただ

前を歩いてるってだけだけどな──。

それでも

少し気分が晴れた。

取りあえず──

教室まではアタシが前にいる訳だから。

アイツに越されない限り。

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