《MUMEI》

「やっと授業終わったよ。あー疲れた」
六限目の物理が終わり、周哉は呟いた。
周哉が帰り支度をしていると、
「あ、周哉君」
秋穂に呼び止められた。
「ん?何?」
「さっき奈々ちゃんと春ちゃんに誘われて、今から部活の見学に行こうと思うんだけど」
「俺も一緒に行こうか?」
「いや、いいよ。結構時間かかると思うから、先に帰ってて」
「わかった。じゃあまた後で」
「うん、また後で」
そう言った後、秋穂は、
「ちゃんと麻耶ちゃんの写真、準備しといてね」
と、付け加えた。
「わかってるよ」
周哉はそう言って、教室から出て行った。

「麻耶の写真は、確かここら辺に入れたよな」
家に帰った周哉は、麻耶の写真を探す為に押し入れを漁っていた。
「えーと・・・。あ、あった。これか」
そして、ようやく秋穂の写真が入っているアルバムを見つけた。
周哉はそのアルバムを開いた。
麻耶の色々な顔を見ながらページを捲っていると、あるページを境に写真が無くなった。
最後の写真は、一年と少し前に撮られた物だった。
(もう麻耶はいないんだ・・・。でも何か最近そんな気がしないんだ)
周哉は秋穂の顔を思い出す。
(ありゃ反則だよ。だって顔が一緒なんだもんな。何だか麻耶といるみたいなんだよ)
その後しばらく、周哉はアルバムを見続けた。

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