《MUMEI》 「何するとや!」 「いいから! 行くな!!」 「そうだよ!」 「はぁ?」 「分かってんのか! 中に入ったら、アンタは……。」 「ボコられるんやろ。」 「!!!」 「覚悟は出来てる。」 凪谷賢史は、 ドアノブを握る手に力を込めた。 「え!? ちょっと待ってよ! このこと知ってる人いるの?」 「おらん。」 「何で言わねーんだよ?」 「俺の責任やから。」 「は?」 「え?」 彼は悪くないはず。 なのにどうして自分に責任があるなんて言うのだろう。 「おかしいだろ。」 颯ちゃんも俺と同じ考えみたいだ。 物凄く不満気な表情をしている。 「おかしない。」 それでも尚言い通す彼は一体何を考えているんだ? そう思って彼の横顔を見つめた時、 ビックリした。 だって決意を秘めたような、 そんな真剣な表情をしていたから。 これから殴られに行くようなもんなのに、 堂々としていて……。 “恐怖”そんな言葉は彼の表情に一欠片もなかった。 前へ |次へ |
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