《MUMEI》

しばらくすると、
更に数人の人達が部屋から出て来た。


その人達は薄気味悪い笑みを浮かべながら、
ジリジリと俺達の方へ向かって来る。


咄嗟に俺は逃げようとした。


だけど、
足はガクガクと震えるばかりで動かない。


体を背けることすらままならない。






そうこうしているうちに、
囲まれてしまった。


「なっ!!」


そうして叫ぶ間もなく口を塞がれ、
強引に部屋の中へ連れ込まれてしまった。


「何すんだよ!!」


颯ちゃんの必死の抵抗も虚しく、空回りするだけ。


小学生が大人に立ち向かうようなもんだから……。


叶う訳がない。


俺と颯ちゃんは、
そのままあっさりと羽交締めにされてしまった。


凪谷賢史があとから続いて来ると、
音を立てて扉がしまった。


改めて部屋を見渡すと、
壁際に置かれた細長いロッカーが所狭しと並んでいた。


そのロッカーの前に、
十数名程の人がいる。


小学生は凪谷賢史だけで、
あとは高校生、
大学生、社会人、それぞれだ。


テレビで見たことのある選手もいた。


普通は会えて嬉しい筈なのに……。


どうしても逃げたいと思う自分がいた。

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