《MUMEI》 この場にいる、 俺達以外の全員が凪谷賢史を殴り終わると、 恐らく最年長であろう人が前に進み出た。 「お! タカさんいくっすか?!」 相変わらず薄気味悪い笑みを浮かべた彼らは、 タカ、 そう呼ばれた人に話し掛ける。 「ああ、もう我慢出来ねぇ。」 「………。」 凪谷賢史は依然、 俯いて黙ったままだ。 彼の体は目を向けられない程傷ついて、 ボロボロになっていた。 「俺はなあ、 今年で引退なんだ。」 彼は凪谷賢史に近寄りながら、 尚も喋り続けた。 「だから人一倍、 今年は努力して、 今年こそはレギュラーをとるつもりだった。」 「………。」 「だけどなあ、 コーチはお前ばっかで見向きもしねぇ! お前がここに来なけりゃ俺はレギュラーのままでいられたのによお!」 ここでふと彼は後ろを向いた。 「なあ、やっぱり足じゃねぇと気がすまねぇ。」 「え!! タカさんマジでやるんすか?」 「どうせ俺は今年で引退出しな。 今辞めたって同じだろ。」 そう言うと彼は、 前を向いた。 「足は辞めろ!!」 颯ちゃんが必死で止めようと叫んでいるが、 彼の耳には颯ちゃんの声など聞こえて無かった。 ゆっくりと………。 右足を後ろへ流し、 キック体勢に入る。 『やめろ――――――――――!!!!!!』 前へ |次へ |
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