《MUMEI》
衣装合わせ
翌日の、演劇部の活動は道具や音響の確認と衣装合わせのみだった。


(けど、なぁ…)


俺の衣装の数は、最も多く


助っ人として吉野が着替えを手伝いに来てくれたが、かなり、憂鬱だった。


「祐也可愛い!」

「志貴はいいよな、動きやすくて」

「去年の柊のお下がりだけどね」


着物で身動きがとれない俺の前で


志貴はクルリと一回転した。


『柊のお下がり』


志貴がそう言った衣装は


去年柊が『俊彦』役を演じた時に着た、真っ白いスーツだった。


…つまり、男装。


志貴が演じる静は、とにかく幼い頃から女らしい物が嫌いで、男物を身にまとい、武芸にまで励んでいた。


それが、兄達よりも遥かに男らしかった為に、両親も開いた口が塞がらず


『似合わなくなったら即やめる事』


を条件に、静は男装を続け、男として生きてきた。


つまり、『二人静』は


無理矢理女装させられ、女として生きてきた俺が演じる静と


自らの意志で男装し、男として生きてきた志貴が演じる静が


恋に落ち


互いに『同性を好きになってしまった』と悩みながらも惹かれていく…というストーリーだった。

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