《MUMEI》
「誰もいないよ?」
聖ちゃんはそう言って瞼を閉じた。
薄くて色素の薄い、柔らかい唇が俺を待っている…。
「……ン…」
そっと唇を重ねたら釜飯の匂いがした。
「貢、好き……」
俺の腕に掴まりながら上目づかいで見上げてくる。
柔らかい栗色の髪が風で揺れる。
「みつぐ、寒い…」
ふわりと胸に入り込んでくる。
「貢あったかい…」
「聖ちゃん…」
愛しくて愛しくて堪らない存在。
こんなにも一人だけを愛しく感じた事はない。
「…ペンションもう行く?」
「…うん、」
「今日はめっちゃ甘えん坊だね?」
「…うん」
擦り寄って甘える聖ちゃん。
今日はちょっと…
やばい……。
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