《MUMEI》
トラウマ
「ごめん、祐也。せっかく友達の俺に…」

「いや、…」


(俺の土産じゃないし)


「お詫びに、明日の夏祭りでは何でも奢るから」


(明日は夏祭りかぁ…)


本当に毎日予定がある。


しかし、俺にとっては祭は生まれて初めてだから、楽しみではあった。


(ん? 待てよ…)


「お前、希先輩と二人で行かないのか?」


守が『祭で浴衣デートは男のロマン』と力説していたのを、俺は思い出した。


「花火大会二人で行くからいいんだ」

「そ、そうか?」


(無駄にフェロモン出てるぞ、柊…)


「なぁ、それよりさっき何で固まったんだ?」


頼が柊を覗き込んだ。


「それは、…ひ●こが、あまりに定番だったからだ」

「定番?」

「東京行くと皆買ってくるんだよ」


(そんなに有名なのか)


知らなかった俺は本当に世間知らずだと改めて思った。


「あまりに、定番過ぎたのよね」

「柊は馬鹿みたいに律義だからね」


(…?)


そして


長期休みの度に、柊ファンが必ずひ●こを買ってきて


更に、柊の両親の関係者も手土産だとひ●こを買ってきて


ほぼ年中ひ●こを食べ過ぎてトラウマになったと、柊は涙目で語った

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