《MUMEI》
ヤンキー登場
(これは、わかるぞ。焼きそばだ)

「…何だよ」


拓磨の手元を覗き込んでいたら、睨まれた。


「お客様に態度悪い!せっかくこんな美形集団来たっていうのに!」

「悪い」


(珍しい…っていうか、初めてみるな、こんな拓磨)


俺は、拓磨と親しげに会話を交わす女性を見つめた。


それは、俺が初めて見る


『ヤンキー』と呼ばれる人種だった。


(これでよく食べ物売れるな)


失礼だが、そう思ってしまった。


「何? あたしに惚れたの?」

「いえ」

「チェッ」


舌打ちする甚平にエプロン姿の女性は


小麦色の肌に


目をかなり強調した濃い目のメイク


地毛ではなく、染めた金髪


左右合わせて…七つのピアス


そして、マニキュアを塗った長い爪をしていた。


「呆れてんだよ、お前に」

「あぁ? 生意気な口きくなよ、拓磨のクセに」


小柄な女性の目は、肉食獣のようだった。


「ちゃんと呼べよな」

「はいはい、おばさん」

「ケンカ売ってんのか!? 『美保(みほ)さん』だろうが!」


拓磨の首を締めるヤンキー女は、拓磨の父親の妹だった。

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