《MUMEI》

いつの時代のかわからないママチャリで駅に戻りそれを返して、ペンションに電話した。


ちょうど他のお客からも電話があったばかりでここに15分後にはつくと言われて二人バス停のベンチに座り到着を待つ事にした。



「マジこのムシ〇ング懐かしいし、小学生の頃鬼みてーに集めてたんだ」

「ふーん、俺は興味なかったからなあ」
あの時死ぬ程ヒヤッとしたけど聖ちゃんはなぜか嬉しそうに受けとったんだ。

何回か僕なんて言われながら話かけられたけど年齢を聞く事に繋がる話題にはならなかったから本当、よかった…。


こんなにヒヤヒヤするからちゃんと大人料金払えばよかったと心底思った。




実家からはこずかい程度しか仕送りしてもらえない状態、姉のマンションの光熱費は姉持ちで引き落とし、食費は宅配を利用して親の口座から引き落としの決まり、加えてバイトの問題作りも最近頼まれない。


本当は正直に聖ちゃんに言えばよかったんだろうけど…


「はあ…」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
ここ数カ月すっかり佐伯家に世話になってる後ろめたさもある。

休日の早朝だけ裏方の品出しや整頓は自発的に手伝っているけどそんなの手伝っている内に全く入らないのは自覚している。


聖ちゃんはバッグにカードをしまうと白い封筒を出して俺に向けてきた。

「え?何?」
「お袋が貢にって」
「おばさんが?」

封筒の中から真新しい一万円札が3枚出てきた。

「子供の頃から忙しくて何処も連れてけなかったから、連れ出してくれてありがとう、だって」
「………そんな…」
「うち店やってんじゃん?俺親と何処も行った事ないんだ…昔は陸ちゃんがあちこち連れまわしてくれたんだけど最近ちっとも構ってくんないし…」

「車でとか飛行機でって言うのは…」


「うん、全部陸ちゃんと…、たまにね?陸ちゃんの友達のシェスターおじさんも一緒だったけど」

「シェスター?猫と同じ名前……」

俺が入りびたる様になってからはほとんど部屋に来なくなったシェスター。ハルカもなぜかほとんど来ない。

「いいのかな?こんなに受けとっちゃって…」
「いーんだよもう!
お袋だって喜んでんだから」


ニッコリ笑う聖ちゃんとおばさんに素直に甘える事にした。






つか、内緒凄くホッとしたのは…言うまでもない。

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