《MUMEI》

しばらくすると、
誰かが口を開いた。


「お前、
どうして抵抗しなかったんだ?」


颯ちゃんだ。


颯ちゃんは痛々しい傷を隠すように、
そっと脱ぎ捨てられた服を彼に着せた。


「こ……れが………。

俺の…せ……きにん……の取り方…や。」


「責任の取り方?」


俺は凪谷賢史のすぐ隣りへと座り込んだ。


そうして、支えるようにして彼の体をゆっくりと起こす。


「ああ…。」


彼は痛みに耐えながら、
力無く頷いた。


「おかしくないか?」


颯ちゃんは顔をしかめた。


「何で殴られるのが、
責任の取り方なんだ?

もっと違う方法があるだろ?」


だけど凪谷賢史は首を横に振ると、
こう言った。


「俺は……奴等よりも……後から入ってきた……んや。

不満……に思うんは当然。

それに……奴等がいくら活躍しても……俺の……せ…いで無駄に……なってまう。」


彼の顔は、
今までにない、
とても悲しい顔をしていた。

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