《MUMEI》

カーラが戦線で脱走したのだ。
ユタは当然、拷問されカーラも捕まる。
二人は俗に言う駆け落ちというものを計画していたのだ。


そしてロスト大佐の二人に対する処分は、
[第二部隊カーラ一等兵の死刑]

[第五部隊ユタ二等兵の無罪放免]
であった。

カーラがユタを誘惑したという第二部隊曹長の証言を基に彼女は公開処刑された。


『ユタ二等兵、反逆者カーラを殺せ。』

ロスト大佐のその命令で把握出来た。
ユタには死よりも辛い仕打ちをすることで僕等翼人に楔を打ち込んだのだ。

『出来ません……』

カーラは張り付けにされ、目隠しと猿轡を噛まされ、拘置されていたせいか、痛々しい痣が顔を浮腫ませていた。


『……時間はたっぷりあるからな。その銃は反逆者に向かうときのみ引き金が引けるようになっている。ゆっくり、考えろ。』

涙を流し哀願するユタに時計を見ながら大佐は冷徹な一言を投げた。
僕が翼ならこの男は鬼人だ……憎らしい。


『大佐、私にやらせて下さい』

口が勝手に動いていた。
僕は庇ったわけでは無い。
むしろユタにとっては恋人を殺した僕は敵でもある。
僕等の中で何かが変わったのは確かだ。


ユタの歯は拷問されたせいで奥歯以外は無く、軍備の防寒マスクを常に装着している。
僕は彼のマスク姿の顔を見てはカーラの潰れていく断末魔の唸りを思い出した。

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