《MUMEI》

「鳥さん……、包帯替えるよ。」

まさか、押し入れに詰められて手当てされるとは。


「……口は大丈夫?」

数日前までは口の中も切れていて話せなかった。


「……ガキ、一人なのか?」


「僕は“あゆま”だよ、一人じゃない、お母さんが……いるもん。」

“あゆま”の母親は水商売なのだろう、派手なブランドのヒールが玄関に落ちていた。
最近の母親は五日も子供を放置していられるものなのか。


「……飯は?」

俺は知っている、
母親に託された生活費も底をついてきているのだろう。
自分の食べる分のパンを我慢して俺に与えている。
痩せ細った体に、乾いた唇をして、止められた水道の代わりに汲んできた公園の水を使い俺の体を拭く。


「……その、パン食え。」


「いいよ、僕食べたもん。」


「給食だけか?子供のくせに、無理するな……俺の上着あるだろ、その中に財布あるから。」

左手の肘だけはなんとか動くので、千円だけ渡してやる。


「僕、お母さんにお金貰っちゃいけないって……」

知らない人間を招き入れるくせに変なところで良い子だな。


「……じゃあ、“お使い”だ。バナナが食べたい。……余ったら好きなもの買っていい。」


「……うん、分かったよ。」

あゆまはなんて嬉しそうに笑うんだ……昔を思い出す。
純粋だった幼い坊、そしてあの人…………いや、昔の事だ。

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