《MUMEI》

一度目の凱旋。
殺しているのに、英雄と讃えられる矛盾。

人間が潰れる嫌な触感をイツバから学んだ。
イツバは僕等の五感を再現している、気が狂うような精神状態で僕を支えたのはあの男の無機な瞳だ。



殺人が罪にならない……いつも僕の脳裏に過ぎる。

戦争なら、人殺しにならない……ならば、“英雄”ロスト大佐を殺しても……


僕は気付いているのに夢想する。
あの男は徹底的に自らを安全圏内に入れて、外部どころか内部までも信用していない。

翼人にはチップが内蔵されていて、細胞の数まで情報が握られている。
僕があの男の目から逃れない限り、僕は復讐出来ないのだ。

首輪のように僕を縛る、乱獲され、躾られる。
生まれながらの捕虜だ。

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