《MUMEI》
「さすがに寒いなー…」
そう言いながら裕斗は部屋に入ってきた。
すれ違う瞬間俺の髪をくしゃりと握り…
そして……
そしてテーブルの前に座った。
いつも使っている大きめのバッグの中を確認しだした。
もう家を出るつもりなんだろう。
髪に触れた指の感触。そこに俺は手の平を充てる。
こんな事だけで嬉しくなっているのは、原因は一つしかない。
今の、
今
今の何気ない行動で……
俺は気がついた。
気がついてはいけない気持ちに…
気付いてしまった……
俺は…
隆志より
裕斗に……
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