《MUMEI》

「――――母さんにも相談して、静流が嫌じゃなかったら俺の学校に転校したっていいんだよ。」
樹が静流の頭を撫でて、言う。

「でも、また何かあったらどうするの。」

「何処にいても、あの事実は変わらない。お前が悪い訳じゃあないんだから、堂々としていればいいんだ」
静流に言ったことを樹は自分にも言い聞かせた。




当たり障りのない会話を繰り返しながら家に向かう。
「そういえば最近、兄貴夜歩きしてない?
ほら、この辺人が変死したみたいじゃない、気をつけなきゃ。」

「――――え、 ああ。」
平静を装うが、樹は体が硬直した。



誰が、 俺が?
夜歩きだって?

   いつ?
  記憶が

   見付からない

――――――アヅサ、アヅサ、アヅサ!

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