《MUMEI》
吉野発見
意外な事に


「撫子!」


俺より、守の足が早く動いた。


現場は、古い神社の境内の、…


(罰当たりだな)


白いしめ縄がついた、神木らしき大木の前だった。


「に、兄様…」


震える吉野の姿は俺達からは見えない。


見えるのは、吉野を大木に押し付けている大柄な男の後ろ姿と


俺達を睨む、四人の男達。


「…兄?」


大柄な男は振り返った。


(意外と若いな)


周りの四人もそうだが


男は俺達と同年代に見えた。


そして


男が振り返ったおかげで、やっと吉野の姿が見えた。


(とりあえず…無事…だな)


浴衣や髪は乱れているが


昔の俺のような目にはあっていない様子に


安心した。


(さて、どうするか)


五人相手でも、何とかなる。


ただ、先に吉野を助けなければならない。


「守」


俺は、守に吉野を連れて逃げてもらおうと思っていた。


しかし


「祐也! 撫子連れて逃げてくれ!」


守はそう言って、大柄な男にタックルした。


「バ、馬鹿!」


(お前に勝てるわけないだろ!)


「やめて兄様! 試合出れなくなったらどうするの!」

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