《MUMEI》
祐也が去った後(龍視点)
(せっかくいい人材だと思ったのにな)


最初、女の子が襲われているのを助けるつもりだった。


次に、助けにやってきたスポーツマン風の少年と


身長の割に、華奢な稀に見る美少年


(おいおい、ヤラレるぞ)


華奢な美少年が残った時、俺は加勢するつもりだった。


しかし


(すご…)


美少年は、無駄の無い動きで五人を倒した。


そして、俺は見たのだ。


五人目の男が、最後の抵抗で美少年の浴衣を引っ張った時に


その背中にある、美しい


片翼を


(でも…あれって…?)


それは、俺の背中の彫り物とは違う種類の物に思えた。


(…って、ボケてる場合じゃねぇ!)


俺は慌ててスカウトを開始した。


絶対こいつはうちの


陸堂(りくどう)組の戦力になる


そう、確信していた。


(なのに…)


帰っていく美少年の背中を見つめながら、ため息をついた。


(よりによって、『田中祐也』かよ…)


俺は、大きくため息をついて


携帯を取り出した。


《珍しいな、タツ。また厄介事か?》


昔から、その男は俺をタツと呼んだ。


「あぁ、…ダイ」


俺も、その男の名前を音読みで呼んでいた。

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