《MUMEI》
始まり(皐月)
「と、いうわけで俺は不幸になろうと思うんだ。」
少年は並々ならぬ意思を皐月に表明した。
皐月は少年より少し年上で、家が近かったので幼いころからよく遊び、少年の姉のようなものだ。
そして、皐月は少々、いや、かなり戸惑っていた。
この子、本気かしら。それにしても、抽象的ね。しかもなんでまた自ら不幸なんて。
「で、不幸になってどうすんのよ。」
「そこまで考えてない。とりあえず、不幸になってみたいんだ。」
なんだこいつ。
「言ってることの意味がわからないわよ。あんたツッコミ所満載すぎよ。ボケとツッコミからひたすらボケよ。」
「そんなの分かってるよ。でも幸せになんてなりたくないんだ。」
「、、、、、」
普段ならそこで少年の姉的立ち位置も含め辛辣に突っ込む皐月だったが、黙ってしまった。
それが少年があまりに切実で、そしてそう思うに至ったには彼の父親が深く関与しているのを察したからであろう。
確かにあんたの父親は、端から聞いても親としてはいきすぎてるよ。でも、、、「あんたが不幸になる必要はどこにもないんだよ。」
大人びた少女の言葉に、少年はひるんだ。少女の言葉があまりにも温かく、彼の心の深いところをついていたから。

しばしの沈黙の後、皐月は言った。
「じゃあ、あんた人の不幸を請け負ったら。」
「? どういう意味だよ」
「ただ不幸になるだけじゃなくて、人の不幸を背負ってあげるの。そしたら、あんたは不幸、あいてはハッピー。素敵じゃない。」
「あ、そうだな。さすが皐月ネエ。」
「でしょう。というわけで、あんたはきょうから不幸請け負い人よ!」
「うわあ、かっこよさげなな響き!それにしてもよくそんなの思いつけるな。」
「まあね、にたような内よの本を読んだことがあってね。」
まあ、内容は最悪だったけどね。
「その本俺に貸してくれよ。読みたい。」
「いつかね。」
心の中で舌をだしながら、皐月は言う。
「さて、不幸請け負い人の始まりね。」

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