《MUMEI》 落とされる…宏はドアの前で、あきらに言った。 「あきら。僕が愛梨を部屋から出すから、その間に君がコングを倒すんだ」 「普通逆じゃねえか?」あきらは不服だ。 「君のほうが強いだろ」 「おまえ、アクション映画とか見たことないのか?」 「あるよ。リーサルウエポンに、ターミネーター」 「何も学んでいない」 「君は学び過ぎだよ」 あきらは覚悟を決めた。やるしかない。 宏がドアを開けて中に入った。 「大変だコング!」 「どうした?」 「刑事が来た。今ボスが応対しているが、あちこちの部屋を覗いているんだ」 コングと宏は、浴衣姿の愛梨を見た。 「そいつはまずいな」 「彼女を安全な場所に移動する」 そう言うと、宏は愛梨の手を取った。 「さあ来るんだ」 愛梨は宏の腕を払う。 「あきらチャンは?」 「無事だよ」 「宏、あきらの下着は脱がしたか?」 コングが笑う。それを聞いて愛梨は目を見張った。 「下着ってどういうこと?」 愛梨は宏の服を掴んだ。 「何したのよ!」 これでは愛梨を部屋から出せない。あきらは部屋の中に突入した。 「あきらチャン!」 「あ、テメー」 コングが襲いかかって来るところを先手必勝の右ハイキック顔面! 「ぎゃっ…」 「今だ!」 宏は愛梨の手を引いて部屋から出た。しかし愛梨は振り向く。 「ダメよ、あきらチャンが」 「彼女は強いから大丈夫だよ、がっ…」 愛梨は宏の顔に痛烈ビンタ! 「あなたそれでも男!」 「そのセリフはセクハラだよ」 「はっ?」 部屋の中では。 あきらが左ジャブから右ストレート! さらに左ミドルキックは掴まれた。 コングは足を持ったままあきらを仰向けに倒す。 あきらはすぐに起き上がろうとするが、コングは足を離さない。 「ぐふふ。今度は容赦しないよ」 そう言うと、まさかのアキレス腱固めを立ったまま決めた。 「あっ…」 あきらは慌てた。左脚に激痛が走る。 「ぐふふ。降参?」 あきらは真っ赤な顔をして必死に逃れようとする。 「降参?」 コングは余裕の笑顔だ。あきらはコングの膝めがけて思いきり右足で蹴った。 「痛い!」 コングが手を離した。あきらは転がって距離を置くと、左脚をさすった。 やはり手ごわい。 あきらは両拳を構えてにじり寄る。狭い部屋は危険。有利か不利かの判断は難しいところだ。 コングが大振りフックで左右から攻める。ガードの上からでも効くのでよけるしかない。 あきらは回り込み右ローキック。 「痛いねえ。そういうことすると泣かすよ」 コングが圧力をかけるように迫って来る。あきらを壁に追い込んで大振りフック。 髪をかすめた。冷や汗ものだ。当たれば終わる。 コングは笑顔。あきらは真剣な表情。 コングが低い姿勢で片足タックル。 「しまった!」 そのまま持ち上げて腰から床に落とす。激痛。あきらの顔が歪む。コングが上に乗る。 「ぐはぐはぎひひひい。さあどうするあきらチャン?」 あきらは下から睨みつけた。 「そういう生意気な顔するとねえ、殴るよ」 コングの重いパンチが顔に降って来る。あきらはひとたまりもない。 「貴様!」 顔をガードすればボディに来る。 「あう…」 まずい。あきらは素早くうつ伏せになった。すると背後から両腕を掴み、怪力で強引に自分の脚で挟んでしまった。 「ぎひひのひい」 あきらはもがいた。 無抵抗のあきら。コングは太い腕であきらの首を巻く。 まず過ぎる。 チョークスリーパー! 「うぐぐぐ…」 落とされてしまう。 「さあどうする女の子?」 あきらは脚をバタバタさせた。 このままでは落ちてしまう。しかし力が違い過ぎてはねのけられない。 「んんん!」 意識が遠のく。 コングは無慈悲にも暴言で責める。 「ぐふふ。落ちたら今度こそすっぽんぽんにして手足を縛ってから起こしてあげる。全身舐めまわしてからピストン運動で再び失神させてあげる」 (冗談じゃない) 前へ |次へ |
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