《MUMEI》
自分の気持ちに気付いてやれよ。
「いや〜満足満足!お腹一杯だよ。」
「そりゃそうだろ、食べ過ぎだ。」
俺は竜崎が食べ終わるまでずっと窓の外か、竜崎によって消えてゆくプリン達を見ていた。なんだか竜崎の顔を直視出来なくて…

「そろそろ帰るか。」
俺は会計をするため鞄から財布を取り出した。
「ゴチで〜す。」
竜崎は胸の前で手を合わせてニッコリ笑った。
「お…おう!」

ヤッバイ!可愛いすぎる。
レジに行くと丁度前のカップルが会計を済ました所だった。

…コイツ、バレねぇよな?
満足気に腹を摩る竜崎に視線を落とすと、タイミング悪く目が合ってしまった。俺は思わず目を逸らす。
「ありがとうございます。只今カップル様は半額にさせて戴いておりますのでお会計は……」

うわっ!マジでバレてねぇし!スゲーな、おい!

俺はかなり安くなった代金を支払うと、余裕な表情で店を出た。本当は心臓バクバクだったけど。

「はぁ。バレなくてよかったぁ〜!」
安堵した気持ちから、つい大声を出してしまった。
「当たり前だろ?だっておれ可愛いもん!」
「そうだな。」

はっ!しまったぁ!!つい口に出してしまった。

「じ、じゃなくて!お前自分で可愛いって言うか?普通…」
俺はなんとかごまかそうとあたふたした。
「ねぇ、沢村君…」
「なっ何だよ。」
急に名前を呼ばれてまた動揺する。
「沢村君。」
「だから何なんだよ。」
「さっきから何で目逸らしてんの?」

気付かれてた。まぁ、あからさまだったしな…

「別に…気のせいだろ?」それでも嘘を突き通す俺。
「ふ〜ん…ならいいけど。てっきりおれに惚れたのかと思ってさ♪」
「!!!なっ…おまっ…バッカじゃねぇの!?誰がっ…!!」

俺動揺し過ぎだろ〜。

「クスッ。冗談だって〜。怒んないでよ。」
「怒ってねぇし。」

〜〜〜ヤロウ…。からかいやがって。

「あ!俺コレ返しに行かなきゃ。」
気が付いたらもう学校の前に来ていた。
「じゃあ俺ここで待っててやろか?どうせ帰り道一緒だし。」
「いや、遅くなると悪いし先帰っていいよ。」
「あ…そ、そう?」

なんか残念。

「今日はありがとねん♪オゴッてくれて。」
「まぁ、昼間の礼だし気にすんな。」
「うん!じゃ、また明日ね〜。」
「あぁ…。」
笑顔でバイバイする竜崎を見て、俺は妙に切なくなった。

空を見上げたらもう夕日が射している。秋だから日が暮れるのが早い。

切ないのは夕焼けのせいか…?そういや明日は日曜じゃん。アイツ忘れてやんの。

少し冷たい風が吹いて俺は家路を急いだ。
顔がニヤけていた。

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