《MUMEI》 アメリカに戻って来ては、罪悪感と後悔の念に苛まれていました。 もう、こんな想いは、繰り返したくない。 だから、中身の無い頭を使って、必死に考えました。 叔父のフォトスタジオに転職して、彼にスポンサーになってもらい、2年後、グリーンカードの取得をしようと思っています。 アメリカで永住権を得られれば、もっと自分の視野が広がるのではないか、と。 けっして、そんなに簡単な話ではないですが、それでも、前に進むことが出来るなら、と思ったのです。 そして、もし、グリーンカードを取得出来る日が来たら。 その時は。 瑶子。 アメリカの、俺の所に来て下さい。 俺の傍で…ずっと俺と一緒にいてください。 それを、伝えたかった。 カード取得まで、また何年も待たせることになると思います。きっとうんざりするくらい。 でも、もし、瑶子が俺と一緒にいてくれるというなら。 アメリカで俺と暮らすことに、頷いてくれるのなら。 今度こそ、迎えに行きます。 来週の金曜日から4日間だけ、取材で日本に帰国します。この仕事を最後に、今の会社を辞めて、月末にはLAに経ちます。 出来ればこの機会に、会って話したいです。 もし、返事がYESなら、連絡を下さい。 お互いの、都合の良い日時を決めましょう。 待ち合わせ場所は、もちろん学校のカフェテラス。 窓側の、あのテーブル…俺達が初めて話した、あの場所が、一番相応しい気がするから。 そして出来れば、ウィークエンドを纏って来て欲しいです。 二人だけの、久しぶりの週末を、あの香りに包まれて、過ごしたいのです。 もしも、俺に連絡をくれなかったとしても、それが瑶子が出した、『最終的な答え』として、真摯に受け止めようと思います。 最後に。 今、俺は、こう思っています。 日本に帰って、一番最初に会いたいのは、他でもなく瑶子だけです。 これから先、長く続いて行くだろう俺の未来を、一緒に夢見て欲しいひとがいるとしたら、それは、瑶子ただ一人です。 その気持ちは、昔から、何一つ変わっていません。 連絡、待っています。 ついていけない、そんな答えでも構わない。俺は失望したりしません。 瑶子には、瑶子の夢がある。 それは、世界中の誰よりも分かっているつもりです。 会社のパソコンのメールアドレスを載せておきます。 俺が住んでいたアパートはもう引き払っていて、今は友達の家に転がり込んでいるのでそこの電話番号と、それと念のため、LAの叔父の住所も。 松嶋 俊平 ***** その手紙を読み終えた後、私は朝まで泣いた。身体中の水分がなくなるのではないかという程、泣きつづけた。 前へ |次へ |
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