《MUMEI》
特別
それから、吉野は迎えにきた父親と一緒に車で帰っていった。


俺と守は、それを見送った後、駅前の自転車置き場まで一緒に歩いた。


拓磨は屋台の片付けが残っており


志貴と頼は、会場に来ている大さんの車で帰ると言っていた。


ちなみに


美形の大さんは、毎年目立つのを避ける為に、知人が用意した特等席で、家族と花火を見ていたらしい。


「なぁ、守。さっき俺より早く吉野の悲鳴に反応したよな」

「したよ?」


『それが普通』


そう、守の顔には書いてあった。


「普段チキンなのに、あんなタックルするし」


あれは、かなり予想外の行動だった。


「ん〜、何か体が動いちゃったんだよね」


それは守も同じで、首を傾げていた。


「妹弟子だからか?」

「ん? 撫子だからだよ。他にも妹弟子っていたけど、今でも付き合いあるのはアイツだけ」

「そうなのか!?」

「この辺で着物の師匠って意外と少ないからね〜」


守は無邪気に笑った。


「アイツは、いつまでも俺を尊敬してくれる、可愛い妹弟子だよ。
だから、大事にしたっておかしくないだろ?」

「まあな」


守にとって、吉野が特別な存在なのはわかった。

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