《MUMEI》

「たまき」

「ぅわ‥!?」

近ぇよッ。

「何だ、赤くなってるぞ」

「オマエが近ぇからだよっ」

「君が何度呼んでも返事をしないから──」

「考え事してるって事位気付けよ‥」

「何を考えていたんだ‥?」

「当ててみな」

「無茶を言うな。僕はエスパーじゃ無い」

「へぇ、オマエにも分かんねー事ってあるんだな」

「当たり前だ。──言っただろう? 僕は綾瀬静瑠だ、って」

「──ふはっ、そーだったな」
なら

アタシは──。

「ならアタシは、霖堂珠季って訳だ」

「そういう事だね」

そう言ってアタシの隣りを歩く静瑠は

凄く優しい目をしてた。

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