《MUMEI》

そおっと、家に入る。


椎名くんは、こっそり家を出たはずだから、
ママに見つかったらいろいろ問いただされるだろう。



忍び足で部屋まで辿り着くと、ほっと息をついた。



『きゃん!!』



ゴジラの声にはっとして、部屋の電気をつける。



「ゴジラ〜!ただいま〜!!」


『きゃんきゃん!!』



本当に、久しぶりの自分の部屋、
ゴジラとは会ってたけど、それでも久しぶりな気がする。


椎名くんが、ここで眠ったりしてたんだなあって思うと、
何だか不思議な気持ちがする。



全部夢だったみたいな、そんな感じ。



―…でも、しっかりと記憶は残ってる。




着替えて、ベッドに入る。



…元に戻ったとき、

ちゃんと椎名くんの声で、
椎名くんの言葉が紡ぎだされることが、たまらなく嬉しかった。


あの声で、私の名前を呼んでくれたことが、本当に嬉しくて。





…ああ、


私は本当に素敵な人に出会ってしまったなあ、って思って、
1人でにやけてしまった。

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