《MUMEI》
夕食
「今日は4時起きでよー、朝抜いて昼油ギッシュな弁当食ってもー胃がやばいやばい、はーフライドポテト上手い」
「なんだそれ、そんなもん食って説得力ねーぞ?全く秀幸は……、あ〜もうケチャップ袖に付く、気ぃつけろよ」
目の下に薄くクマを作った、寝不足丸出しの秀幸。
秀幸の腕を掴み俺の方に引き寄せ袖を捲ってやる。
ちらりと秀幸を見れば、すっかり全てを俺に任せた様子で、穏やかな表情をしていた。
「……」
「な、加藤君連絡あった?」
「………
うん、あった」
「様子は?」
「……うん、まだ…
イマイチ…」
「…そうか」
泣きじゃくってたかと思えば俺から笑顔で離れ、大丈夫を何度も繰り返して立ち去った惇。
いや、笑顔じゃない。
心の中では泣いていたんだ…。
惇は、無理矢理自分を殺して、俺から離れた。
−−−−後悔
抱いてはいけない相手に手をだした。
…その場の流れでとんでもない事をしてしまった。
どうして俺は…
あんな事をしてしまったのだろう…
抱いた後も体に惇の感触が残って、風呂場で、ベランダで集中して頭をからっぽにしたのに。
玄関で縋りつかれたとき、泣かれた時…
本気で惇を愛しく感じてしまった。
唇を合わせたくなった…。
でも、堪えきれずに抱きしめてしまった…。
今まで感じた事のない、彼に対する感情。
それが何なのかは………。
「な、収録終わったら迎えに行くから」
「ダメだって、今日は寝ろ?こんなにクマ作ってかっこつけてんじゃねーよ」
全てを信じきった
秀幸。
俺は、
秀幸を愛している。
どう考えたって
秀幸でいっぱい。
なのに………。
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