《MUMEI》
いつもの朝 〈私〉
朝。


目が覚めると、懐かしい天井が目に入った。



ああ、夢じゃない!


元に戻ったんだ!!




私は、起き上がると鏡の前に立った。



ちゃんと、私だ。



嬉しくなって、急いで着替えると1階に駆け下りた。



よく考えたら、女子の制服も久しぶり!



「おはよう!!」



私が元気よく挨拶すると、キッチンにいたママと、
リビングのテーブルについて新聞を広げていたパパが、
驚いたようにそろって顔を上げた。



「どうしたの、かなめ。…何かいいことでもあった??」


「やけに元気だな」



私はえへへ、と笑うと、



「まあ、ちょっとね〜」



と言った。



「あら、なになに!?椎名くんと何かあったの!?」



ママが乗ってきた。

―…あながち間違いじゃないけど―…



「椎名くん…??―…かなめ、それは…か、彼氏とか言う―…」



パパが真剣な顔で訊いてくる。



「違うわよ、椎名くんって、ほら!かなめを事故から助けてくれた美少年よ!!」



「…―び、美少年……」



もう、ママが余計なこと言うから…!!



「ホントに違うよ、椎名くんは命の恩人なんだから、
変な誤解しないで!!」



パパに言うと、



「そうか、悪かったな…」



と、気まずそうに新聞に目を戻した。



「ふふ、あんなこと言ってるけど、
かなめが病院に運ばれた時は血相変えて飛んできて、
椎名くんのママに繰り返しお礼言ってたのよ。
…怪我は大したこと無いって分かったら、すぐ帰っちゃったけど。
言うなって言われたから、ママも黙ってたんだけどね」



ママがこっそり教えてくれた。



「そうだったんだ…」



パパは、私が思ってたより、
私のことを想ってくれてたんだな…



すごく、嬉しかった。

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