《MUMEI》

「大好きなサッカーは諦めれん。」


凪谷賢史は目を閉じたまま、
静かに告げた。


「やけどな、
俺は他人の夢を奪ってんねんぞ。

俺のせいで何人サッカーを諦めたことか……。

せやから、
俺に出来ることは全て犠牲にせなあかん。」


「何でそう言う考えになるんだよ。」


あからさまに怒っている颯ちゃんの声が聞こえた。


「お前は何も犠牲にすることはないんだぜ?」


「他人事や思うて言うな!」


「っ違う!!」


「何が違うねん!

お前等に俺の気持ちなんて分かる訳ないやろ!!」


「だけど!!」


俺の隣りで、
颯ちゃんと凪谷賢史が口論を繰り広げる中、
俺は考えていた。


何故彼は………。


自分自身を犠牲にしようとするのだろう?


だって彼は………。


「人一倍、やったんだろ?」


「は!?」


「なんや?」


どうやら俺の声が聞こえたようだ。


二人は怖い顔のまま、
こちらを向いていた。


「い、いや、
ちょっと疑問に思ってさ…。」

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