《MUMEI》

「何を?」


苛立って颯ちゃんが言った。


「だってさ……。

努力したんだろ?

人一倍、誰にも負けないようにって。」


その言葉に颯ちゃんはハッとした。


「そうだ!

お前は何も犠牲にしなくて良いんだよ!

むしろ威張れ!!」


「は?

な、何言うてん。」


彼は困惑顔で俺と颯ちゃんを見つめる。


「何言ってんのかさっぱりや。」


「つまりだな。」


颯ちゃんはコホンと一つ咳払いをした。


「お前は妬まれる程努力してるってことだ。」


ここで俺が颯ちゃんの後に続く。


「君は生まれつきサッカーが上手かった訳じゃないだろ?

そりゃあ多少の才能はあったかも知れないけど。」


「………まあ…、
そうやな。

俺、三才くらいの頃、
知り合いがサッカーしてんの見てん。

そいつのプレーはな、
凄かってん。」


彼は笑顔で言う。


「俺、それ見て思うたんや。

俺もこの人みたいになりたいって。

めっちゃ凄い人になって、
バリバリ活躍してやるぞって。」

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