《MUMEI》

俺と颯ちゃんはひたすら彼の話に耳を向けていた。


「サッカーを始めた頃はな、
しょーもない程下手くそでな。」


彼はククッと苦笑いした。


「せやけど、頑張ってん。

絶対上手なってやるぞって、
毎日猛特訓してん。

いつも体中に痣出来てたなぁ。」


何処か、懐かしむような声でそう言った。


「夢中になって、
ふと気がついたらレギュラーになってた。」


「良いじゃん。」


「うん。」


「やけど、
思うねん。」


「俺、ホンマにこのままサッカー続けてて、
えぇんやろか。」


「さっきサッカーは諦められないって言ってたじゃないか。」


「やけど………。」


しばしの沈黙のあと、
颯ちゃんが突拍子な発言をした。


「困る!!」


「なんや?」


「どうしたの?」


「お前がサッカー辞めたら、
俺が困る!」


「どういう意味やねん。」


彼は顔をしかめた。


「うん。」


俺も同意した。


「俺………。」

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