《MUMEI》

「俺、
お前がサッカー辞めたら困る。」


「やから何でやねんて。」


「う、うん。

何がいいたいの?」


俺も彼も、
颯ちゃんの言葉について行けない。


「俺はな、
お前を目標にしてんだ。」


やっと颯ちゃんの話の意図が掴めてきた。


「だから困るんだよ!

俺、
お前みたいに周りから注目される程、
足速くなりたいんだ。



颯ちゃんは二カッと、
真っ白な歯を光らせながらそう言った。


ビックリした。


だって……。


「俺も…………。」


「お前もかよ!」


「う、うん。

俺も凪谷賢史を目標にしてるんだ。」


「ちょ、ちょまてや。」


彼は慌てて俺達を交互に見つめた。


「何やねん!

お前等、なんかしてるんか!?」


「おう!」


颯ちゃんは満足気に笑うと、
胸を張って答えた。


「俺、陸上やってんだ!」


途端に彼の目が見開いた。


「へぇ〜!

そうなんや。

種目は?」

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