《MUMEI》

「俺が……? ってことは、ユキナとサトシは大丈夫ってことだよな? 殺されないよな?」
「ああ。とりあえず、おまえが生きてる間はな」
織田の言っている意味がよくわからず、ユウゴは眉を寄せる。
「つまりおまえが生きてる間は、他の二人はおとりの役割を持ってる。だから生かされるってわけさ」
ケンイチが人差し指をピッと立てて言った。
「奴らは俺が二人に会いにいくかもしれないと思ってるわけだ?」
ユウゴが言うと、織田とケンイチは同時に頷いた。
「しかし、もしおまえが殺された場合、他の二人におとりの価値はなくなる。だから、その後の二人が無事でいられるかどうかはわからない」
織田の感情のない声に、ユウゴは俯いた。
「……つまり俺がいつまでも捕まらなければ、二人は無事なわけだ」
「そういうことだ」
ユウゴは口元に笑みを浮かべて顔を上げた。
「よし。それなら、逃げのびてやろうじゃねえか」
そんなユウゴの様子を見て、織田とケンイチは同時に笑みを浮かべた。

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