《MUMEI》 愛は会社を救う(13)サンプルとして整理したのは、由香里が入社した3年前の雑件ファイルだった。 今の作業で抽出された方、つまり今後も保存する方の文書を手に取ると、私は少し妙な事に気付いた。 「ずいぶんとファックスを利用しているんですね」 内容はまちまちだが、ファックスはそのほとんどが本社からの通達だった。 「3年前なら、Eメールもファイル管理システムも、すでに導入されていましたよね」 「ええ、もちろん。でも、本社発の連絡文書だけは、今も総務のファックスに送られて来ますよ。必要な部署には回覧してますし」 「なぜでしょう」 私の問いかけに、由香里は少し考えてからこう答えた。 「なんでも、インターネットが普及しだした頃、メールの誤送信が続いたらしくて。トラウマ、って言うんでしょうか」 「ほう」 IT化初期にありがちな失敗だが、それ以上に興味深い情報だった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |