《MUMEI》

「桜に幕」が兼松の手に下れば、一気に20文もの大役が完成する…。



定石を無視した捨て札に、兼松は言いようのない屈辱すら覚えた。



〆華は沈黙したまま、兼松の膝下に眼を伏しているだけだった…。



(糞!…この女!…舐め腐りおって…)



兼松の肩が震え、怒りを押し殺した睨みを〆華にぶつけ返した。



だが〆華は、そんな兼松の憤りをはぐらかし…



じっと、自ら場に切った「桜に幕」に視線を落としていた…。



絢爛な桜吹雪に、縦縞の"幕"…



〆華の脳裏に、不意に訪れる懐古…



桜の札絵がモノクロームに染まっていった…。



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